「流動創生CrossOver 関係人口の分解と再構築」イベントレポート

「流動創生Cross Over 関係人口の分解と再構築」

「関係人口という言葉を説明してください。」と言われたら答えられますか?

最近よく耳にしますが、改めて聞かれるとドキッとしませんか。
移住定住でも観光客でもなく、縁のある地域に何らかの形で寄与する、個人と地域の新しい関わり方と言われています。

では、受け入れる地域と訪れる個人にとってメリットばかりなのでしょうか。
これから地域に関わるには、どのような距離感が良いのでしょうか。

一人で考えていても分からない、ということで参加してきました。

〈記事:Natsumi Yumura

登壇者

複属」「分人」という社会構造から俯瞰する、庄司昌彦さん。

釜石という地域目線から読み解く、手塚さや香さん。

旅するデザイナーという視点から捉える、ヨハクデザイン 武田明子さん。

「場所や組織に縛られない働き方や暮らし方」「FLOW LIFE」をコンセプトに掲げる流動創生荒木幸子さんをファシリテーターに、関係人口について読み解いてきます。

会場

BETTARA STAND日本橋
はじまりの場所」と「多様性」と「共有」がコンセプトなので、今回のテーマにピッタリです。

難しそうなイベントのタイトルのためか、会場はやや緊張気味。
荒木さんが参加者に話を振っているうちに、ゆるやかに本編に移っていき、空気がほぐれたところでスタートです。

イベントは、登壇者3名のスライドを交えた講演と、トークセッションという形で進行していきます。

個人・地域・社会など多様な視点をもつ登壇者たち

そのままの流れで、まずは導入として荒木さんのトークからはじまりました。

荒木幸子(あらき さちこ)
1985年横浜市出身。両親が東京生まれの転勤族。
都内Sler企業にてコンサルティング部隊に、5年間所属。
その間に、3.11を経験し、大きな社会の変動に脅かされず生きる方法を模索するため、それまでの環境を一転。
2013年より福井県南越前町地域おこし協力隊として活動し、2015年より南越前町公式事業として「流動創生事業」の、企画・運営を行う。

「一つの仕事だけでなく、複業やフリーランスなど枠組みを取っ払った働き方が出てきた。
居住があって仕事あることを概念的にすると、個人が企業や地域にどうやって関わるかという帰属意識の関係にも繋がる。」と荒木さん。
関係人口という言葉が盛り上がる前から各地でいろんな取り組みがありますが、全てが一緒くたにされて混乱しそうだなと懸念を感じている人も多くいるのでは。という思いからイベントを企画。

今日は、働き方や生き方までどんな切り口のお話聞けるのでしょうか。

1人目の登壇者、庄司先生にバトンタッチです。

庄司昌彦(しょうじ まさひこ)
1976年東京都葛飾区出身、埼玉県育ち。
国際大学GLOCOM准教授として、情報化の進展が社会に与える影響とその対応、特に地域の社会の情報化などについての調査研究に従事。
内閣官房長オープンデータ伝道師、総務省地域情報化アドバイザーなども務めている。

この時キーワードになった「複属」とは、複数のコミュニティに所属することです。
これまで1つの組織にどっぷりと浸かってきたのに対し、SNSの登場で複数のコミュニティに所属するようになり、社会全体も変化してきています。
また「分人」とは、一人の人間は分けられるということ。
会社にいる時と友達といる時では別の顔を持っているように、1/2や1/3に個人をスライス出来るという考え方です。

庄司「複属という言葉に対して、若者からは「「属」という言葉のイメージは重い。私たちのコミュニティ感覚はInstagramのハッシュタグ的だ」と言われました。缶バッジをいくつも付ける感覚とも、少し似ているかもしれません。
たくさん繋がっているように付けるかもしれないけど、同じグループに所属しているっていう重さはないんですよね。
僕が頭の中で思い描いているのは、mixiのコミュニティだったんです。
彼らに比べると、古くて重いものだったみたいですね。
そうは言ったものの、人によっては、どこにも属さないというのが許されても良いんじゃないか。っていうことも気になっています。」

“属する”というと、重い感覚がありますが、軽く考えていいし、捉われる必要はないという発想が新鮮でした。

地域とのお付き合いは個人のペースで

トークセッションのパートに移ると、地方では人数が少ない分、1人がいくつもの役割を兼ねる事が普通だという話に。
そこから、次のように発展していきます。

荒木「”関係人口”という考え方だと、いろんな地域に無限に属せるみたいな言い方もたまに聞くんですけど、そんなことないなと思っていて。
1人の時間も、使えるパワーも、1人以上ではないじゃないですか。分人した時に5地域だったら1/5人だし。」

庄司「自分の中でもそれをやりくりできるかっているのもある。人によって、『僕は、10地域と付き合います』『私はひとつだけ、ふたつだけ』という人もいるかもしれないので、『いくつ以上はちょっとね…』とは言いにくいんですけど。どこまでもOKとしてしまうのは違うかもなという気がします。
歳をとって来たせいなのか、やっぱり、どこかに根っこがあった方が良いのかなと、3割くらい思いはじめています。」

続いて登壇したのは、イベントのために、なんと5時間かけて岩手県釜石市から来てくださった、手塚さん。

手塚さや香(てづか さやか)
1979年さいたま市出身。毎日新聞の記者を経て、2014年より釜石リージョナルコーディネーター協議会(通称「釜援隊」)に所属。
釜石地方森林組合で人材育成事業、森林体験受け入れ、釜石大、槌産材の高付加価値化に取り組む。
県内の仲間とともに発足した「岩手移住計画」としても活動。
新聞記者の経験を活かし、記事執筆、県内の事業者の広報活動のサポートも行う。

釜石は、「オープンシティ戦略」という、地域内外の多様な人材が交流することにより、地域活性化や課題解決に結びつける取り組みを行っています。
そこからさらに、新しいアイデアを提案。

手塚「コーディネートみたいなことを割りきって、ビジネスにできないかなって。
システム的に出来るかは分からないけど、地域の方も受け身なだけではなくて、一緒に面白い関わりができたらと思っています。」

どうやったら、訪問する方も、地域の方も笑顔になれるのか。
地域の目線から、まっすぐに前を向いて挑戦し続けている印象を受けました。

現場の声にはフィードバックを

講演で伝えきれなかった地域の課題について、受け入れる側の2人が、リアルな意見を共有。

手塚「実際の現場に関わっている側としては、大きくは、この3つ。(上の画像参照)
『お祭りやイベントで、一緒に神輿を担いでくれると嬉しい』みたいな意見ですとか。
漁師さんには、自分たちの仕事を知って欲しいし、牡蠣などのファンを増やしたい思いがあって、受け入れに協力してもらっています。
企業さんだと、消費者のニーズを知りたいから、来てくれた人たちにフィードバックして欲しいって。
住民さんの立場関係なくよく聞かれるのは、『お金を落として欲しい』という意見。率直なお願いですね。」

荒木「関係人口側も出来ることは違うし、何を求められているのか分からないみたいなところもあったりするので、関わった人達が喜んでくれたり、フィードバックが返ってくるのは大事なのかなと思いますよね。」

手塚「そういう意味では、関係人口と呼ばれている人たちが、稼ぎたいと思っているのか、別にそうではないのかとか。その辺が明確になってくると、滞在場所など、こちらとしても考えやすいし付き合いやすいのかなと思いますよね。」

荒木「or NOTがちゃんとついているかどうかが大きくて。地域は勝手に、地方で稼ぎたいんだろう、貢献したいんだろうと、決めてかかってるところもあるんですよ。
ニーズが違うところにあるかもしれない、という思いを気付かせてあげられると、地域も違うかなって思いますね。」

休憩をはさんで、最後に登壇したのはヨハクデザインの武田明子(たけだあきこ)さん。

武田「関係人口にどうやったらなれますか?という質問に対しては、ちょっとぶった切りますけど、プレイヤー側が名乗ることではないと思っています。
名乗るのはそこに住んでいる人に対して失礼なんじゃないかな。
受け入れる側が価値を感じたら、あなたは関係人口だねって言ったらいいと思うんですけど。」

気持ちがいいほどさっぱりとした意見は、地域の方を尊重しているからこその発言のように感じました。

地域を知るきっかけには移住ツアー

会場の誰もが気になっていそうな質問を、手塚さんが代表して、トークセッションで聞いてくれています。

手塚「それぞれの場所にいきなり行って、『スダチもがせてください』じゃなくて、誰かしらがいるから行くんじゃないかなと思うんですけど、そういう人ってどうやって見つけるのか知りたいかな。」

武田「入りとして一番あるのは、移住ツアーですね。移住しませんって言って参加するので、嫌な人なんですけど。
それを許してくれるってことはキャパが広いんですよ。
来なくてもいいけど、ツアーは参加してみたいなスタンスのところは、わりとよそ者を受け入れてくれる。
1回行って、肌に合いそうならまた自分で行く。
それで、2回目、3回目で、本当に来てくれたってなったら、『じゃあこの人もあの人も紹介しよう』みたいな感じで、関わってくれる人が増えていきましたね。」

手塚「東京のイベントとかで地方の人とつながってっていうのは、あんまりないですか。」

武田「ありますよ。愛媛のイベントとかはそうでしたね。」

クロストークはまだまだ盛り上がる中、予定時間よりオーバーしてしまいこの辺で終了。
懇親会の時間を考えて、少しだけ参加者からの質問に答えました。

参加者「関係人口という言葉がありつつも、受け入れ側が求めすぎちゃいけないんじゃないかと。
何か用意しておくんじゃなくて、人が楽しそうなところに関わりたくなるでいいんじゃかなって。」

武田「基本的に地域の方って、みんないい人なんですよ。ホスピタリティが溢れてるんです。
でも、いつもフルコースで準備していると、あの人が来ると大変だなって疲れちゃうと思うんですよ。
それを伝えていかなきゃいけないなって思います。」

参加者「求めていけばどこまででもやってもらえたり、関係性自体が楽しくなる。」

武田「搾取する人は増えてほしくないですね。
地方は資源が豊富なので、くれるからといって無償でもらえるのが当たり前の関係は作っちゃいけないなと。
こちらは何が返せるんだろうっていう姿勢でいなきゃいけないなって思っていますね。」

荒木「おもてなしし過ぎ問題に関しては、数やケースの問題もあると思うんですけど、武田さんみたいな人が増えれば適当になっていくんじゃないかなって思っていますね。」

最後に
あっという間に過ぎてしまった3時間。

イベント終了後の懇親会では、途切れることなく登壇者に挨拶をする参加者の姿が見られました。
関係人口というと、少し肩に力が入ったようで身構えてしまいますが、訪問する側も、受け入れる側も、もっとゆるく考えてもいいのだと思います。

いい意味で適当に放っておくくらいが、お互いにバランスが取れるのかもしれません。
これから地域が活性化していくことはもちろんですが、個人と地域の居心地がいい距離感が見つかり、お互いに高めあえる関係性を築いていけることが期待されます。

〈記事:Natsumi Yumora